127 ソファーに、暮らそう。 吉野 利幸 システムの発想から生まれた �生活環境� としてのソファー ● ユニット 多様なユニットを自由に組み合わせられる製品構成が魅力。好みのサイズや形を選んで、パーソナルコーナーからファミリースペースま で、さまざまなくつろぎの形をデザインできます。 ● クッション 土台から中間層、表層まで、素材選びと構造を吟味して生まれた、ボリュームのある座クッション。そのやわらかさを物語る美しい表面の 皺は、フェザーをふんだんに使っている証です。置き型クッションは居心地を高めるだけでなく、張地選びでカラーコーディネートも楽 しめます。 ● シェルフ ソファーで長い時間を過ごすなら、お気に入りの道具が「必要な距離に」ほしい。雑然としがちなそれらを、整えすぎずに美しく配置でき るよう、ボックスやテーブル、シェルフを揃えました。 ベッドのような居心地 MOLA LUXは、「座る」というより「体をあずける」感覚で時を過ごして ほしいソファー。行儀よく硬い座面に腰掛ける、たとえば待合室のような ソファーとは一線を画そうという提案だ。そのために座の奥行きを深く し、広くふわふわな座面を肌触りのよい布でくるみ、体をあずけられるや わらかな背やアームを用意した。イタリアで「よいソファー」と呼ばれる もののほとんどは、ベッドのようである。 への字の角度がもたらす幸福 人と人は、必ずしも真正面に向かい合う必要はない。かといって横並びだ とコミュニケーションが不自然。その中間ともいうべき「への字型」は、 座った人同士がほどよい距離感で関わり合える、日本ではあまり見かけ ないコーナーソファーのアイデアだ。座面の奥行きは最大約900mm。そ の背にもたれて脚を伸ばすくつろぎ感を体験してほしい。 「ものとの距離」を使い分ける ソファーの前にはセンターテーブルを置くのが一般的だが、あまり見せ たくないものまで見えてしまう。それを目的別に分解しようと考えた。 いつも手元に置いて頻繁に使うものは横に置いたソファーボックスに。 必要なときが限られるものは背面にセットしたシェルフの中に。途中に なっている書き物はサイドテーブルに、というふうに使い分ける。空いた センターテーブルのスペースには、オットマンを置くこともできる。 無垢でないことの軽さ 私は、自然に人々の生活の一部になっていくことがインダストリアルデ ザインの美学だと考えている。どのように加工するか、どういう手順だ と手早くできるか、といったことまで計算してそこに知性を入れていく 仕事だ。それにはクラフトの有機的な力強さとは異なる、無機質な軽い 空気感がちょうどいい。その雰囲気を表現するため、シェルフの棚板に は北海道産シラカバの積層材を採用した。 使い方を、あえて決めずに 私が以前から、新たなユーザーと意識していた「デジタル世代」へのアプ ローチでもある。彼らはアレンジ上手だから、おそらくマニュアルなしで も自らの使い方を考えるだろう。私は吟味した造形を提供するだけ。自 分の場所を自由につくり、座りたいように座ってくれればいい。
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